まだ見ぬ旅の驚きを発見「旅のプロ、旅へ出る」 トクー!には、他にない特別なボーナスがあります。ボーナス支給条件はただ一つ、どこにも紹介されていない旅をして、皆様に紹介すること。
旅のプロ、旅へ出る

『今からでもオリンピック選手になれるかも!』     〜冬季五輪競技、リュージュ・スケルトン体験〜


『夢のある旅行』とは何だろう!

色々考えてみた。
今しか出来ない事をするとか…。いや、よくあるパターンだ。
今の季節しか出来ない事をする…。更によくあるパターンだ。

「旅のその先」に繋がる「夢のある旅」、そんな旅行をしてみたかった。
平凡な人生にカンフル剤を!自分の殻を突き破る位のインパクトを!冒険を!

さて、ボルテージが上がった所で今回の旅はこれだ!

『今からでもオリンピック選手になれるかも!』
   〜冬季五輪競技、リュージュ・スケルトン体験〜

冬季五輪の競技だと言っても、
リュージュやスケルトンと聞いて、正確にあ〜あれね、
と答えられる人は少ないかもしれない。

簡単に説明するならば、専用のソリに乗って、
専用の氷のコースを生身一つで滑ってタイムを競う競技である。
リュージュは足が前、スケルトンは頭が前の違い位で、専用コースは全て同じ。

因みに「氷上のF1」と呼ばれるボブスレーも同じコースを滑る。
ボブスレーはマシンの様な乗り物だが、リュージュとスケルトンは
単純なソリで、ヘルメットは被るものの体は丸出しだから、
車とバイクの違いみたいなイメージだろうか。

さて、話を進めよう。

リュージュやスケルトンは冬季五輪実施競技ではあるが、
国内では恐ろしくマイナー競技である。

競技人口については、国内ではおおよそ、
リュージュ40名、スケルトン80名位しかいない。
どちらの競技にも登録している人がいるので、実際は更に少ない事になる。

過去に注目された選手としては、
スケルトンでソルトレーク(2002年)に五輪初出場した越(こし)選手がいる。
彼はソルトレーク当時、37歳だっと言うが、驚きなのは、
その後、2006年トリノ、 2010年バンクーバーと3大会連続で出場している。
バンクーバー時は計算すると45歳という事だから、中々息の長い競技だ。

私も去年の暮れに36歳になり、アラフォーの世界へ足を踏み入れたが、
この事実を知り、まだまだ新しい人生が待ち構えている事を確信した。
リュージュ40名、スケルトン80名…。
平昌オリンピックは3年後。。憧れの五輪選手、、、いける!

リュージュとスケルトン(ボブスレーも)は
素人にも日程限定で体験会が行われている。

週末。土曜にリュージュ、日曜でスケルトン体験が出来るというので、
今回は、それに参加し、まずは自分の適性を観て、
五輪選手を目指そう!人生を変えよう!という
正に「夢のある旅行」を楽しもうとしたのであった!

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舞台は1998年の長野五輪でも競技会場となった
長野県長野市の飯綱高原にある
ボブスレー・リュージュパーク、『スパイラル(愛称)』。
ここは現在、国内唯一の公式戦が行われる場所でもある。
まぁこれから世界を相手に戦う為の第一歩として場所の下見も出来るという訳だ。

東京を早朝に車で出発し、朝、長野市に到着。
前日の大雪で雪だらけの長野市。まずは体験の無事を願って
善光寺でお参りする。おみくじを引いたら、
「新しい事始めは上手くいく」という様な事が書かれていたので、
幸先が宜しいようで、益々導かれている様な錯覚に陥った。

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体験は11時〜だったが、スパイラルには1時間前に着いた。
現役の選手達が、練習で丁度コースを滑っていたので、
未来のライバル達を観戦する事に。
周りも雪だらけだが、コース内は氷だから、観ているだけでも流石に寒い。

コースの幅は大体約2m位で、深い筒状の形状をしている。
スパイラルのコースは全長1,700m。どの選手も1分弱で降りて来るという。
時速に換算すれば、100㌔〜140㌔となる。スパイラルは多少の起伏があるので、
あくまで平均時速という事だから、速い場所は恐ろしく速いという事だ。
いや、待て待て。僅か幅2mを滑走する訳だから、「体感速度」は更に速いのは間違い無い。
言わば、車で路肩が全く無い一車線の高速道路を時速100㌔で突っ走る様なもの
か。。
想像するだけで身震いがするが、管理のオジサンが、怪我は余り無いよと言う。
本当なのか!

「コースに入った」「スタートした」「途中ポイントの通過タイム」「ゴールした」
「ゴールタイム」「コースから出た」のコールが、管制塔からアナウンスされている。
選手滑走中にコース内に人が立ち入れば、轢かれて大事故を起してしまうので、
必ず、選手の滑るタイミングが管理されているのだ。

コースの頭上は青いビニールシートで覆われている為、
途中滑っている所を遠くから観る事は出来ない。
(雪がコースに積もると摩擦が起り、スピードが出辛くなる為、
 ビニールシートが被せられている。取る時があるのかどうかは不明)
という訳で、私はゴール地点でライバルを偵察する事にした。

スタートして、しばらくして途中ポイントの通過タイムがアナウンスされた頃から、

シャーーーーーー!

と氷を切る音が遠くの方から聞こえて来た。
スキーやスケートととも全く違う音。
バックストレート前に90度近いカーブがある為、
そのカーブを曲がってこないとゴール地点から選手は見えないが、
まるで真っ暗なトンネルの中から何かがいきなり飛び出して来そうな音である。

シャーーーーーーーーーーーーーーーー!

どんどん音は大きくなって来る。

シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

来た!曲がってきた!

  ええええええええええ、速い!!!!!

あっ、、、、という間に私の前を通り過ぎていった。

  なんじゃそりゃ!!!!滅茶苦茶速い!!!

バックストレートは選手がゴールして止まり易い様に、
5%位、上り坂になっている。
だからスピードは落とされるはずなのだが、、、、。
うむむ、想像していたより全然速いぞこれは!!

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その後もリュージュ、スケルトンの選手の滑走を何名か見たが、
どいつもこいつもちょっと頭おかしいんと違うやろか!と思う位の速さ。

そういや、体験内容に『約70㌔は出ます』と書かれていた気が。。。
私は遊園地の絶叫マシンは大嫌いだし、乗った後、気持ち悪くなる程なので、
スピード系には全く強くないが、まぁぐるんぐるん回転する訳じゃないし、
何とかなるでしょ、と思っていた。。だが、それにしてもこいつは速い。。

100分の1秒を争う競技な訳だから、解ってはいたが、TVで観るのと、
実際競技を生で観るのは大違い。しかも、自分が今日は体験するのだぞ?
ヘタレ根性を叩き直すべく、とりあえず深呼吸をした。。
その呼吸をする間に未来のライバル達は恐ろしいスピードで前を通り過ぎていく。

──────────────────
11時。体験説明会には、未来の五輪選手達?になるかもしれない卵達が
集まっていた。中には小学1年生位の小さな子供もいる。これは本気だ。
親は狙っているぞ。自分の子供が五輪選手になる事を。いや、親自身も狙っているかも!

体験1日目はリュージュ。

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長野県ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟、
そり競技教室担当の小口貴久さんが説明してくれる。
因みに小口さんも先に紹介したスケルトンの越選手と同じく、
ソルトレーク、トリノ、バンクーバー五輪に3大会連続で
リュージュの選手として出場している凄い人。

身体は大きくて、如何にも選手らしい身体付だが、声は高めなので、馴染み易い。

小口さんが説明してくれるには、リュージュのそりと滑り方は至って単純。
仰向けに寝た姿勢で、2本の歯(クーへと呼ばれる物)を足で挟んで滑走。
この2本のクーへはエッジになっており、内側へ押し込んで、
そりをしならせることで、そりが左右に曲がるとの事。
(※エッジが効くと言っても、スキーやスノーボード程では無いらしく、
  申し訳無い程度のエッジらしいので、急スピンの様な事は出来ない。出来たら危険だ)
そして、頭をなるべく下げて、氷上と水平にする事で空気抵抗を減らすと、
スピードがより出るらしい。

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とは言っても我々は素人なので、
曲がる技術や空気抵抗を減らす等、いきなり習得する事は難しいので、
守って欲しい事は3つだと教えられた。

①横の取っ手をしっかり掴む事。
 ※掴んでないとスピードが速いので振り落とされます。安全ベルト等はありません。
②頭を下げ過ぎない事。
 ※幾ら空気抵抗を減ると言っても頭を打ってしまっては話になりません。
  空気枕がある様な体勢で顎を引いて少し前を見て滑るという事なのでしょう。
③足でクーへを挟み、足を止まる時意外は氷に付けない事。
 ※③は記憶が曖昧です。違うかも。御免なさい。

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我々体験者は、一番上から滑るのでは無く、コース途中から横入りし、
最初は少し押して貰って加速を付け、体験滑走を2本滑るとの事。
下記の図で説明すると、[13C]START地点からスタートし、
13C、14C、15Cの3つのカーブを曲がり、S17のゴール地点まで行くそうだ。
一番上からの滑走では無いと解った時点で、何だ、その程度の距離か、
と思ったと同時に、ヘタレな私は若干ホッとする。

しかし、小口さんは言った。
距離は短いですが、時速70㌔位は出ますし、
そのスピード感を楽しんで頂けるかと思います、、、と。
ん、、。コース距離は全長1700mのうち、13Cからのスタートは僅か300m弱。
それなのに70㌔も出るのか、そんなまさかね、余程上手く滑ったらの話だろう、、
でもドキドキ!ドキドキ!心臓は高鳴る!
五輪選手になるんだろ俺は!(と言葉だけはあくまで強気)

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【13CSTART】の位置まで徒歩で移動途中、現役選手達の滑りがゴール手前の
14Cカーブ辺りで見る事が出来た。ここは下り坂なので、ゴール前より更にスピードがある。
とにかく速い!そう、まるで鉄砲玉の様に目の前を過ぎ去っていった。
ありえん。滑って来たぞ!と写真を撮った時には既に通り過ぎていて
ファインダーには何も写っていない。

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いよいよ、体験滑走が開始される。
滑る順番はゼッケン番号順で、私は最終滑走前の順番だった。
ヘルメットを被ると、覚悟も出来て気持ちも盛り上がっていく。

リュージュの本来の滑り始めは、手で氷を掻き、スピードを出して行くが、
体験の場合は、現役選手が体験者達が乗ったそりを後ろから少し押して、
その勢いで滑っていく。

小口さんが「いってらっしゃ〜い」と手を振りながら声を掛けてくれる。
まるでその言葉と行動は、遊園地の乗り物に乗る客を優しく送ってくれる
スタッフのお兄さんそのもので、それに安心してか、
ゆっくりと13Cのカーブ先へ消えていく体験者達。
大きな滑り台をゆっくり滑って行く様なそんな感じに見える。

しかし、それに反して管制塔からは、「〜選手、ゴールしました」「タイム〜秒」と
体験の割りに本番さながらの発表が続いていた。
一体どの場所からスタートの秒数を数えているのかは解らなかったが、
大体21〜22秒位でタイムは殆ど変わら無いので、皆スピードは大体同じ位なのだろう。

観ていると、13Cのカーブを観ていると時速にしてせいぜい20㌔位しか出ていない。
それから加速したとしても時速70㌔も本当に出るのだろうか?
ただ、最初のゆるゆる滑りを含めてコースタイムが21秒であるならば、
後半が如何に速いかは計算すれば大体は解る。解るが、、
自分自身滑ってみないと何とも言えない。いや怖い。

私の前を滑るはずだった女の子がスタート地点に立ちはしたが、
半べそを掻いてでリタイアしたもんだから、自分の番が一足先にやって来た。
リタイアしたのは10歳位の女の子。36歳の私が同じリタイアをする事など許されない。

そして私はスタート地点に付いた。
そりの台座は長さ1m位、幅50〜60cm位か。お尻を真ん中辺りに置き、
両手でそりに申し訳程度に付いているグリップを握り、
クーへを足で挟み、そして頭は浮かして、少し頭を上げて前を見る。
説明は受けた物の、そりは思った以上に単純明快だ。大丈夫か、これ。

行ってらっしゃ〜いと言う言葉に微笑みながら、
軽く押し出された私を乗せたそりは13Cカーブへ流れていった。

さて、その後は、正直何が何だか解らなかった。

私の声だけお届けすると、

「おおっ(13C曲がる辺り)
 
 ちょっ、ちょっ、ちょちょちょ、速っ!(13C過ぎ)

 めっちゃ速い、めっちゃ速い。(14C手前)

 ウオーーーーーーーー!(14C辺り)ギェーーーーーーーーーー!(15C辺り)」

ゴーーーール!

・・・。

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茫然自失とは正にこの事だろう。
何じゃこりゃ。とにかく、凄い。

後から思い出して説明すると、
13C辺り迄は予想通り大きくゆるやかな滑り台の様なイメージは崩れなかったが、
その先からそりは一気に加速していき、スピードは恐らく50〜60㌔を軽く越える。

14Cのカーブは壁に突っ込んで行く感じだが、
先にも説明したように滑る場所は円筒状になっており、
スピードが出ている為、遠心力により、ひっくり返る事無く、
そのままアウトコースの横壁を滑っていく。

更にスピードを上げ、15Cの最終カーブを曲がる頃には、
私はもう成されるがまま。操作もへったくれもない。
いや、その前から操作など出来ていない。出来ていた気分だけ。
そして最後の直線を滑ってゴールし、管理のオジサン達に止められた。

・・・。
何なんだろうか、これは一体。。

ブルーシートに覆われている為、天井が低く、
まるでブラックホールに吸い込まれていく様な感覚。
大きなプールにあるウオータースライダーに似ている様な気もするが、
スピードとスリル感はまるで違う。当然、こちらの方が100倍凄い。
しかし余りにも速く、自分の見る景色に頭が追いついてこない。

何もしてないし、、と言うか、これは誰でも滑れるんじゃないのか。
とにかくコース外に出て、ボーっとした頭を現実にようやく戻した所で、
そうか、後もう1本滑るのだ、という事に気付く。

2本目。
もう既に恐ろしい事、意味が解らん事はよく解ったので、
次は多少の操作をしてみる事を念頭におき、滑る事を考えた。

とりあえずコースタイムが放送されているので、
この参加者の中でせめて一番速く滑らないと、
「君、素質あるんじゃないか?真剣にやってみないか?」
とスカウトすらされない。

どうせ恐怖あり、スリル有り過ぎは解っている。
怪我は無さそうなのであれば、後は冒険をしてみるに限る。

スタート地点、用意。
スタッフのお姉さんに「1本目大丈夫でしたか?」と聞かれ、
「あっ、大丈夫です」と如何にも平気でしたよ、と調子良く伝えたところ、
そりを押す係りのスタッフが、「次はもう少し強めに押してみましょうか?」
と聞いてきたので、『えっ、、、どれだけ強めに?』と心中で思いながらも
「あっ、宜しくお願いします」としょうもない強がりを言ってしまった。

Img_5086

強めに押し出されたそりは快調に13Cを曲がっていく。
ようはスピードを緩めず、如何に最短距離を進むかにより、
タイムは縮むのだ。遠心力で横壁を走る事はあっても、
ガタッとそりが落ちてはスピードが緩む。

滑走コースはもう覚えているから、後はコース取りと
操作を如何に上手く滑るかだ。

13Cを曲がった後、右足でクーへを右に押し、山側のアウトコースを滑る。
ここから14Cを曲がる際に左足でクーへを左に押し、アウトコースからインコー
スへ!
インコースへ!インコースへ!

まぁそう、いきなり上手くいくものでは無い。
13C後、操作して山側のアウトコースを滑る事は出来た様な気がするが、
そこからは1本目よりスピードが出ているから、とても操作など出来やしない。
それでも14Cの手前で一応、左足を動かした気はする、気はするが、
既にその時、そりは横壁を滑っていたかも。勿論、15Cもあっという間に目の前
に。。。
そして、あっという間にゴールした。。

ああ、終わってしまった。。

しかし、ここでヘルメットで遮られている耳で微かに
「タイム20秒ほにゃらら」、と聞いた。
おっ、20秒台が出せた!他の体験者は21秒台が殆どだったから、
もしかして操作が効いたかも!と浮かれつつ、こっそりニヤニヤ。
後から考えれば、タイムが速かったのは強めに押し出された効果だと思うが。
(※実際の競技でも最初に走り出すスタートタイムはかなり重要です)

2本の体験滑走が終わり、2本目の滑走で気分良くした私は、
もう1、2回滑りたいなぁ、という後ろ髪を引かれる気分にとらわれながら、
明日2日目のスケルトンを楽しみに山を降りていった。

──────────────────
2日目、スケルトン。
前日と同じく、小口さんが説明をしてくれた。

リュージュとスケルトンは兄弟の様なスポーツだが、
実際、長年の経験値を生かせるのはリュージュ。
スケルトンは逆に競技日数が短くてもそれなりに滑れる様になるらしい。
現に昨年、たった3日間練習しただけで全日本選手権に出た人がいる、
という事だから、全日本選手権とは一体、、、と思いながらも、
確かにリュージュでも勝手に滑って行くのだから、それより
多少簡単かどうか解らないが、スケルトンも素人でも少し練習をすれば、
日本代表になれるかは別として、様にはなる滑りが出来る様になるのだろう。

いや、五輪を目指している私としては、それぐらいハードルは低い方が良い。

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クーヘの歯が前に出ているリュージュと違い、スケルトンは頭が前に来る為、
歯はそりの下にしか無く、単に台車に乗って滑る感じだ。
リュージュと同じくサイドに取っ手があり、それを掴み、
同じ様に足は氷上に付かない程度に少し上げ、顔も氷上に付けない様に少し上げるとの事。

方向を変えるには、肩を入れ、曲がりたい方向に向くと、曲がるという事で、
これはリュージュよりは解りやすい。

という訳で、説明は昨日のリュージュと余り変わらないが、
小口さんは最後に気になる事を言った。
リュージュ専門の小口さんは、「私はスケルトンの方が怖いと思います」と。
スピードはリュージュの方が出るそうだが、スケルトンは氷上と顔が近いので、
スリル感はこちらの方があるのでは、と。
まぁ人それぞれですが、と意味深な事を言って、説明は終わった。

昨日の2本目で調子に乗っていた私だが、また恐怖感がモゾモゾ身体から湧いてきた。
しかし、たった3日練習しただけで全日本選手権に出る人がいるのだから、
私の五輪選手への道もスケルトンの方が近い。
まだ見ぬ恐怖におののいている暇は無いのだ。

昨日と同じく【13CSTART】地点に移動する。
今日の私の順番は最終滑走で、トリを飾るべくバッチリと滑らなければ、
未来の五輪選手はここから始まったと、伝記にもならない。

スケルトンのヘルメットは、原チャリで被りそうなヘルメットと違い、
フルフェイスで顎ガードも付いている。
氷上に一番近いのは顎だから、それを守るものだろう。
しかし、本当に顎が付いたら氷で削れてしまう事は間違いない。

気になった事があった。貸して貰ったマスクが少し大きい。
目の場所が隠れそうな気がした。

さて、最終滑走。私の出番。
スケルトンはそもそもそりを片手で押しながら中腰姿勢で走り、
スピードが付いたところで飛び乗る。

が、当然、素人の私らは専用の靴は履いて無いので、
氷上を走る事は勿論出来ないし、飛び乗りも失敗しかね無いので、
昨日と同じくそりにのった状態の私達を現役の選手が押してくれる。

今回、そりを押してくれるのは、スケルトン仲間から
「職人!」と呼ばれている名前は忘れたがヘビー級の男性。

職人は確かに押し方が上手かった。
13Cのカーブが見えない場所まで体験者と一緒に滑って行く。
そのままゴールしてしまうんじゃないかという感じだ。
言わば、ボーリング場で投げた勢いで体もレーンをそのままツツーと滑って行き、
ピンの近くまで行くイメージだ。

この職人技術を後押しに、私も昨日より更なる飛躍を。。
競技も違うのに、既に素晴らしい滑りを決めた自分を妄想している。
人間、自信は大事だから。

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さて、私の番がやって来た。
意気揚々とそりに乗っ掛かる。そりは幅80㎝、縦1m10㎝位か。
後ろにずり落ちない様に腹をそりの中心部に乗せ、
横から見れば肩まではそりに乗り、頭部は完全に前に飛び出している感じ。
サイドの取っ手は腰部分辺りに付いているので、両肘は90度位曲げてしっかり掴む。
しかし、スケルトンの取っ手はリュージュより更に小さく感じ、これが俺の命綱なのか、
と不安に感じてしまう。

スタート。
職人に押され13Cへ、ゆるゆると滑って行った。
頭が前なので、自分で滑っている感はリュージュより強い。
氷面と近いから、プールで潜水泳法をして、
プールの底を這うように泳ぐイメージに似ている。

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しかし、当然そのイメージが当てはまるのもスピードが出ていない13Cまで。
14Cが近付きスピードが出始めると、最初の説明はもう払拭され、
カーブだらけの幅の無い海溝をマッハで進む潜水艦か?マッコウクジラか?

しかも先に説明したヘルメットが少し大きかったせいか、
この見え方が当たり前なのかはわからないが、
スピードが出ると私の目線は顎を上げても5m先も見えていない。
14Cからゴール手前までは、私の目線はほぼ50㎝手前の氷面で、
コースの景色もヘッタクレも無い。
定められたルートをただ滑って行った、
パチンコ玉が最初の打ち出しの左部分から
頂上部へ行くまでのお決まりコースを走る様なものだろうか。
違いは玉の打ち出しスピードが速いか遅いかの違い位だ。
但し、パチンコ玉が速いのは初速であり、スケルトンは後速の違いもある。

滑走したコースの半分を、私は50㎝手前の氷面だけと付き合った。
ゴールした私は何だったんだろうと疑問に思わざる終えない。

何だったんだろうか、今のは。。。
この疑問は昨日のリュージュの1本目でも同じ感覚だった。
しかし、今日の疑問は更に酷く感じた。何せ、氷上50㎝先しか見ていないのだ。

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気を取り直して2本目を滑る事にした。
問題はヘルメットがずれた事もあり、目と鼻の先しか見えなかった事にあると
私は断定した。とにかくヘルメットをずれない様にしっかりベルトを絞め、
出来る限り顔を上げる。そして、肩を入れてカーブを上手く曲がり、
好タイムを出す!昨日も2本目で修正能力の高さを表したじゃないか!

その為にもまずは最初の好ダッシュのスタートをしたい!
職人宜しく!と、期待してそりに乗った。

しかし、ここで予想外の事態が発生。
私は体験者の最後。職人は約15人×2回体験で既に30回近く、押している。
職人は完全に疲れていた。好発進を期待した私だが、
1回目よりスピードが遅いのでは?という感じで13Cに向け滑り始めたのだ。

他力本願は既に終わった。こうなりゃもう自力しかない。
13Cに向け、グッと右肩を入れ、上手く左カーブを曲がり、問題の14Cへ。
アウトコースからインコースへ入る為に私は左肩をグッと入れた。
しかし、グッが遅かったのか、グッが足りなかったのかは解らないが、
私の身体は14Cのカーブを綺麗に曲がりきれず、横壁を滑ってしまった。
しかもスピードが無かったせいか、遠心力は続かず、

14Cと15Cの間でガタッと横壁から滑り落ちてしまった。
完全にスピードダウン。あぁ、、と思う間に15Cを曲がり、ゴール。

2回目のタイムは、最下位から2番目。
恐らく小学生の女の子が2~3人いたから、小学生にも負けた。

マズイ。完全にアピール不足。 修正能力の高さを見せつけ、強化選手にスカウトしようかどうしようか、 連盟に迷わせる予定だったのに。。。

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集合場所に戻り、小口さんは、

「皆さんお疲れ様でした。  次回のご参加や選手登録をされてまたお会いできることを連盟役員・選手一同楽しみにお待ちしております。」 との事。

選手登録・・・。良い響きだ。アスリートの匂いがする。

スケルトンでは良い結果は出せなかったので、 私はきっとリュージュ向きの人間だろうと勝手に考えていた。何せ現役選手は国内に40人だ。私は41人目の男。。女性もいるから男性はもっと少ないか。

オリンピック選手になるにしてもまずは選手登録をしなければならない。 小口さん曰く、選手登録は各連盟で若干異なるとの事だが、

長野県ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟では、 年間約20,000円の登録料(保険料含)を支払えば、 そりやヘルメットなどの用具レンタル代が登録料に含まれており、更にこのスパイラルの施設での滑走料も無料!また、夏場にそりの乗り方や体力トレーンングといった練習も行うらしいが、 これらへの参加費も含んでいるとの事。

ようは基本的に現在の仕組みでは、連盟に登録さえすれば、費用を殆ど掛けず、 そり競技をする事が出来る訳だ。まぁ、他のスポーツがどれ位の登録料が掛かるのかは解らないが、 用具レンタル、夏合宿の参加費、施設利用料も全て含まれているのなら、正直全く高くない。スキーやスノーボードを何回も行くより割安。。。

後は自分がオリンピック選手になる為に飛び出す勇気だけ!

平昌オリンピック日本代表選手。。うむ。良い響きだ。。。。

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リュージュ・スケルトン・ボブスレーの体験は スパイラルにて、 11月~1月の期間限定で行われている。 1回目は2000円だが、2回目以降は500円となる。

なので、今回、私の体験は1日目2000円で2日目は500円となり、一人 2500円と中々リーズナブル。

詳しくは

▼長野県ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟

http://www.nagano-blsf.com/trial/news.html

来シーズンは体験してみて下さい。 違う世界が見つかるかも!

(私はもう完全に連盟・選手気取りです。)

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